日本にはあらゆる宗教や宗派があり、それぞれ葬儀の仕方が異なります。
葬儀は故人を見送るための大切な儀式。日本のお葬式の種類や特徴を知っておくことで、いざという時に心構えができるはずです。
そこで今回は、宗教別・宗派別に日本の葬儀についてご紹介します。葬儀を行う立場はもちろんのこと、参列する立場になった時にも役立つ内容です。
宗教別でみる葬儀の特徴
日本の葬儀の特徴について、宗教別にご説明します。
宗教別の葬儀1:仏教
仏教は仏陀を開祖として開かれた宗教です。日本の葬儀で最も多いのが、仏教式のお葬式です。一般的にはお通夜から始まり、お葬式・火葬を行います。
【仏教式の葬儀の特徴】
日本で行われる葬儀の約9割を占める仏教式。故人を極楽浄土へ送り出すことが仏教式の葬儀の目的です。仏教式の葬儀には、僧侶による読経や焼香などの特徴があります。参列者は数珠を持参し、僧侶にお布施を渡すことも仏教式の独特な風習と言えます。 仏教式で葬儀を上げる場合、値段は200万円前後が相場です。しかし、参列者の人数や葬儀会社によっても異なります。
宗教別の葬儀2:キリスト教
キリスト教は、イエス・キリストを信仰する宗教です。そのため、葬儀は洗礼を受けた信者のためのお葬式であり、信者以外はキリスト教のお葬式は行えません。 一般的に、キリスト教の葬儀は、カトリック系とプロテスタント系の二つの宗派に分かれます。同じキリスト教でも、宗派によって死生観が異なるため、葬儀の仕方にも違いがあるのです。
【キリスト教の葬儀の特徴】
キリスト教の葬儀は、教会や自宅、斎場で行われます。キリスト教では、お通夜は行いません。ただし、日本の風習にちなんで、お通夜に変わる儀式も可能です。
キリスト教のお葬式では、聖歌もしくは賛美歌の斉唱や、神父もしくは牧師によるお祈りがあります。献花を行い、故人が神に召されることを祝うことがキリスト教式の特徴です。火葬式でも聖歌を斉唱します。
葬儀の値段の相場は、70〜80万円ほど。仏教式より費用を抑えることができます。
宗教別の葬儀3:神道
神道とは、民族宗教と呼ばれ日本独特の宗教です。神道式の葬儀は、日本の神道に基づきます。神道では、死は穢れという捉え方があるため、お葬式は自宅もしくは斎場にて行います。
【神道式の葬儀の特徴】
神道式の葬儀には、成仏という概念がなく、故人は神の仲間入りをすると考えられています。神道にとっての葬儀は、家の守護神になるための儀式なのです。
お通夜にあたる通夜祭では、玉串奉奠を行います。玉串奉奠とは、紙垂を結びつけた小枝を神前に捧げて祈る儀式です。
神道のお葬式は葬場祭と呼ばれ、斎主による修祓の儀で、棺や参列者を祓い清める儀式を行います。続いて祝辞の奏上、弔辞・弔電の読み上げ、玉串奉奠を行う流れです。火葬式では、神職による祭詞の奏上が行われます。
神道式の葬儀の値段は、30〜50万円が相場です。
その他の葬儀
日本で増えている葬儀が、無宗教式の葬儀です。宗教的なしきたりにとらわれず、自由な形でお葬式を行えます。
【無宗教の葬儀の特徴】
無宗教の場合、仏教式から宗教の要素をなくした形でお葬式を行うケースが多いです。
一般的には、黙祷や演奏、献花が行われます。全員で故人を見送った後は火葬場へ。火葬後に会食を行う場合もあります。
宗教独特のお布施がないため、お葬式の値段は低い傾向です。ただし葬儀場を利用する場合は、値段が高くなる場合もあります。
時代とともに、日本の冠婚葬祭の形も変化してきました。これからの日本は、宗教を介さないお葬式が、当たり前になるかもしれませんね。
また、葬儀だけでなく供養方法も幅広い選択肢が増えてきており、樹木に納骨する樹木葬などの自然葬や、遺灰からダイヤモンドを作製する遺灰ダイヤモンドなどの手元供養が現代の供養ニーズに寄り添っていると話題です。遺灰ダイヤモンドを作製するのにかかる価格は、従来のお墓への納骨で発生する費用に比べるとリーズナブルなので、価格面を重視する方におすすめです。
仏教の宗派ごとの葬儀の違い
ここからは、仏教の宗派ごとに、日本の葬儀についてご説明します。
【日本における主な仏教の宗派】
真言宗
日蓮宗
浄土宗
浄土真宗
天台宗
真言宗の葬儀の特徴
平安時代に空海によって開かれた真言宗は、密教の教えに基づいた宗派です。真言宗の葬儀は、大日如来のいる密厳浄土に送るための儀式として行われます。
他の宗派とは一風変わった儀式として、灌頂(かんじょう)や土砂加持(どしゃかじ)があります。灌頂とは、仏の位になるために行う儀式です。土砂加持は悪行の償いをするために行います。
日蓮宗の葬儀の特徴
日蓮宗は鎌倉時代に開かれ、法華経を大切にしている宗派です。日蓮宗の葬儀は、故人が霊山浄土へと旅立つための儀式であり、南無妙法蓮華経の題目が幾度となく唱えられます。 葬儀では、「引導」と「開館」を行います。引導は、仏様と故人を引き合わせるために行われる儀式です。開館では、僧侶が棺桶を叩きながらお経を読み、お供え物を祭壇に祀ります。
浄土宗の葬儀の特徴
浄土宗は、鎌倉時代に開かれ、南無阿弥陀仏を唱えれば成仏できるという教えがある宗派です。葬儀の中では、参列者一同が念仏を唱える儀式の「念仏一会」が行われます。
「下炬引導」と呼ばれる儀式も特徴的です。故人を極楽浄土へ送るために、僧侶による「下炬の偈(あこのげ)」の読み上げが行われます。
浄土真宗の葬儀の特徴
浄土真宗には、さまざまな宗派が存在します。その中でも信者数が多い宗派は本願寺派です。浄土真宗本願寺派では、阿弥陀如来の力を信じることで、故人は死後直後に極楽浄土で仏になれるとされています。
また、浄土真宗の葬儀は、阿弥陀如来に対して感謝を捧げるための儀式です。そして戒名の代わりに法名が与えられ、死に装束を着せたり、塩で清めたりすることはありません。
天台宗の葬儀の特徴
天台宗は、平安時代に最澄によって開かれた宗派です。どんな人も仏の子だという教えがあり、法華経を経典とします。
天台宗の葬儀で行われる特徴的な儀式は、「顕教法要」「例時作法」「密教法要」と呼ばれる3つです。「顕教法要」では故人の罪を懺悔します。「例時作法」は、南無阿弥陀を読み上げる儀式です。そして「密教法要」では、故人が極楽浄土へ行けるように祈ります。
自分の家の宗派が分からない場合の確認方法
いざ葬儀をしようと思っても「ご自身の家の宗派がわからない」といった場合もあるでしょう。その確認方法についてご説明します。
仏壇を確認する
まず、仏壇の御影像などを確認しましょう。
【真言宗】
仏壇の中央には、ご本尊の大日如来、右川には弘法大師、左側には不動明王の御影像があります。
【日蓮宗】
仏壇の中央には、法華曼荼羅と呼ばれる掛け軸、右には鬼子母神、左に大黒天。位牌には、 妙法の文字が書かれています。
【浄土宗】
ご本尊の阿弥陀如来は仏壇の中央に配置され、右に上半身が金色に光る善導大姉や、左に法然上人の御影像があるのが特徴です。
【浄土真宗本願派】
本願寺派の仏壇の中央には、ご本尊の阿弥陀如来があります。頭部から8方向に伸びた後光が特徴的です。
【天台宗】
仏壇の中央には、座像の阿弥陀如来、右側には天台大師智顗、左側には伝教大師最澄の御影像が祀られることが多いです。
お墓を確認する
宗派によってお墓の特徴は異なります。お墓を確認すると、手がかりが見つかるでしょう。
【真言宗】
竿石の正面に「南無大師遍照金剛」や、本尊の大日如来を表した梵字「ア」が彫刻されていることがあります。
【日蓮宗】
多くの日蓮宗のお墓には、竿石の正面に「南無妙法蓮華経」もしくは「妙法」の文字が彫刻されています。またすべての戒名に「日」が書かれている場合、日蓮宗の可能性が高いです。
【浄土宗】
竿石の正面に「南無阿弥陀」や、阿弥陀如来を意味する梵字が彫刻されているケースが多いです。戒名に「誉」という字が書かれている場合もあります。 【浄土真宗本願派】 浄土真宗本願寺派のお墓には、特に決まった形式はありません。「南無阿弥陀仏」や「倶会一処」と刻まれることが多い傾向です。また、墓石の裏側や墓誌に、故人の法名の彫刻があります。
【天台宗】
天台宗のお墓には、決まった形はありません。「先祖代々之墓」と書かれているケースが多く、大日如来や阿弥陀如来を表す梵字が彫刻されることもあります。
親族や寺院に確認する
年配の親族であれば、宗派を知っている可能性があります。過去の葬儀について尋ねれば、手がかりとなる情報が見つけられるでしょう。
また、先祖代々の墓地がある菩提寺に確認すれば、宗派を教えてもらえることもあります。
まとめ
今回は、日本で行われる主な葬儀・お葬式の種類について、宗教や仏教の宗派別にご紹介しました。
故人の宗教を知っておくことは、心を込めて送り出すために大切です。
日本で最も多い仏教式の葬儀は、たくさんの宗派があり戸惑うかもしれません。宗派がわからない場合は、今回お伝えした確認方法が役立つでしょう。
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